プヤ交流
No. 10
『快兎という子供』 シモツキ
僕は快兎(かいと)、その辺の小学生だよ!ある日、僕の事が見えるって言うお姉さん2人組と、ぼーっとしてて人なのかもよくわかんない人(?)が来たんだ。僕と、そのよくわかんない人(ププっていうらしい)はプヤでね、んーっとね、簡単に言うとお化けとかゆーれーとかそういう感じ。そしたらお姉さんたち、悪さをしてるプヤをどうにかしたいって言うから、居場所を教えてあげたの。僕、偉いでしょ。そしたら松本っていうヤンキーみたいな怖くて嫌な感じの人が居て、廃校舎から出せとかなんとか言っててさ、でもなんかそれが面白くてぴょんぴょんしてたらお姉さんたちに怒られちゃったんだ。だからもう僕、あいつの事は知らなーい。なんか赤いカーペットとかそういう話してて、しかもサイトウとか言うこんなに無害な僕の事まで消そうとする人と色々してたけど、それはたぶんお姉さんたちが説明してくれるからいいよね。てか怒られなくても普通に嫌な感じの人だったもん、僕どーでもいい。きょーみなーい。あとなんかププは、全然記憶ないらしくて、ちょっとずつ取り戻していったみたいなんだけど、正直難しすぎて僕よくわかんなーい。小学生だもん。だから、嫌な感じの松本も、変なサイトウってやつも、ププも僕の担当外なの。だから僕は僕の話だけするね。これはね、松本のことが色々終わって、新しいプヤが出てきて、なんかププがちょっと新しい記憶取り戻したりしたくらいのお話。
新たなプヤが裏山に現れたと聞き、2人とププと快兎は向かった。快兎とププはいつも通り2人に付いていっただけだったが、それでも快兎の自由奔放さと、淡々としたププの言葉は今回も役に立った。ただ少しお堅い案件で、苦しい案件だった。弁護士と医者の両親のもとに生まれ、何もかもを与えられ、進む道は弁護士か医者かの二択だった青年。決して悪い両親ではない。真っ直ぐに青年を見て、真っ直ぐに言葉を伝え、真っ直ぐに進むように導く聖人のような親だった。ただ、一つ青年の心を蝕んでいたのは孤独だった。世間的に見れば何不自由のない優秀な青年。だが青年からしてみれば、周りが普通に持っているものだけが足りない。形だけ、外側だけがある、空虚を抱えていると思っていた。物事を始めるときに形から入ると言うが、それに近いものを感じていた。
事が起こったのは、大学受験だった。青年は優秀で、難関大学も合格間違いなしと言われていた。青年もそのために努力をし、自分なりにどの道に進むか将来を見据え勉強に励んでいた。ただ受験当日、青年は無理が祟ったのか熱を出した。両親は受験は後期でも浪人でも構わない、今は風邪を治そうと声を掛けた。凄く当たり前のコミュニケーションだった。その数日後、熱が下がり裏山で青年は自殺した。昔別荘地だったそこは、青年の中での温かな家族の思い出が最後にある場所だった。今はただの森となり、寺院が付近の墓地と共に管理する土地となっていた。そこにプヤとなった青年は佇んでいた。荒れた墓地を綺麗にするのが日課で、逆に綺麗な墓地を汚くするのも日課だった。やはり青年は孤独だった。彼の墓地もそこにあった。毎週お手伝いさんによって磨かれていた。月命日には両親が来ていた。それでも彼の孤独は満たされず、ただその度に青年は墓を汚した。ただ彼は、両親に自分のことを心配して欲しくて、自分のことを両親の手で何かして欲しかった。子どものような純粋な願いだった。ただ、それを両親には大丈夫と言う言葉でごまかしていた。気付いてほしかった。優しい噓で、自分を護るための嘘だった。結局、両親に墓を磨いて貰うと、青年のプヤは儚く散った。いわゆる成仏したのだ。この間に、両親を探し出したり、両親にそのことに気付かせるために2人とププと快兎が奔走したが、その話はまたどこかで。
そのあとだった。杏は少し沈んでいた。誰も悪くないことで、誰かが死んで、プヤになって悪さをして、そして居なくなる。その事実が杏にとっては苦しかった。プヤを救っても、人を救えないという現実を感じた。それでもプヤを救うことは無駄ではないと、ただプヤを救いたいという気持ちに嘘はないと、決意を新たにした。そこでまずは、近くに居る快兎に目が行った。行動を共にしている割に彼のことが見えていなかったからだ。
事件が終わって、プヤも成仏して帰るとこだった。そしたら杏お姉さんがいきなり「なんでそんなに嘘ばっかり言うの?」って言ってきたんだ。ここで僕はいつも通り、「噓じゃないもーん」って答えたの。でもなんか今日は杏お姉さんはそれじゃ許してくれなかった。「真剣に答えなさい」って、裏山で怒鳴られちゃった。たぶん、僕だけのらりくらりしてて、お姉さんもちょっとイライラしちゃってたんだと思うんだ。でもそんなの僕だってよくわかんないし、どーしようもないじゃん?こんな性格急に変えられないし、そもそもお母さんのせいだもん…。とにかく僕悪くないの!なのに怒鳴ってくるから「僕もう知らない、一緒に居なくていいもん」って言って走って山奥まで来ちゃったんだ。
杏は救おうと手を伸ばしたつもりが、子供を少し𠮟るつもりが、子供の心を閉ざしてしまったことに気付いた。慌てて涼とププと共に追いかけようとするも、木々が多く人間には難しい道だった。足があるとかなんとか快兎本人は言っているが、実際はプヤだ。透けていて、体も物とはぶつからない。プヤ自身に接触の意思が無い限り、物はすり抜けるのだ。ただこの奥は道も整備されていない山奥。このまま進むとどこに繋がっているのか、土地勘のある杏にもあまり見当がつかない。山奥すぎて、誰も足を踏み入れないからだ。それでも杏は諦めきれなかった。一度近付いたプヤだ。今更見捨てることも出来ない。それにプヤとはいえ、快兎はただの子供だ。まだまだ快兎は1人になることを嫌う。平気な顔をしながら、何かと理由をつけて私たちの足を止めさせる。でも快兎は素直じゃないから、直接待ってとも一緒に居ようとも言わない。こちらから、一緒に行こうと言えば大人しく付いてくる。どうしたいの?と聞くのは快兎には悪手だと行動を共にしていて気付いていた。なんで、も快兎には向かないことを経験から気付いていた。それなのに焦って、自分の疑問をぶつけてしまった。快兎は素直じゃないが、結局は素直だ。やりたくないことは嫌な顔をするし、やりたいことには目を輝かせるし、自分が出来ることには勝手に向かっていく。そして、自分の意思を貫く。言葉は素直じゃない。こちらが導いてあげないと、極度の天邪鬼だから、嘘ばっかりつくから。あ、そうか、その嘘は、自分が言わなくても気付いてほしいその表れなのか。さっきの青年のプヤもそうだった。ただ自分の事を見て欲しかった。でも言って、それが伝わらなかった時が怖いから。嘘をついてへらへらして、傷つかないようにしていたんだ。
結局山奥まで来ちゃった。ここがどこか分かんないし、どうやって戻ればいいかも分かんない。怖い、いや怖くないもーん、僕平気だもん、大丈夫だもん、うん。なんで噓つくのとか言われたの初めてだったなぁ。お母さんは、嘘を全部信じてくれた。お母さんは全部僕の言うことをうんうんって聞いてくれてた。凄いねって。ドラゴンの話も、学校でいじめっ子に勝った話も、この前公園で有名人に話しかけられたのも全部、そうなんだって信じてくれてた。全部全部噓なのに。そうだったらいいなって思った、僕のただの空想なのに。最初に嘘ついたのは、お母さんが熱出しちゃったとき。元気出して欲しくて、その熱は地球の奥の奥に居る魔物のせいだから、お母さんは悪くないんだって言ったの。治った時にはね、昨日僕がその魔物倒したんだって言ったの。そしたらありがとうって、快兎のおかげで治ったよって喜んでくれて、それが嬉しくて、嘘ってにこにこになるんだって思った。それからいっぱいお母さんに笑って欲しくて、いっぱいいろんな話をした。でもそしたら急に怖くなっちゃった。それでなんとなくお母さんに聞いたの。僕が死んじゃったらお母さんはどうする?って。そしたらお母さん、どうしてほしい?って言ったの。だから僕は、お母さんが笑ってるのがいいなって思って、笑ってて欲しいって言った。でも本当は悲しんで欲しかった。でも言えなかった。ある日いつも通りお母さんに学校であったことをいっぱい喋って、でも半分くらいは嘘で、あ、牛乳こぼしたのは本当だよ、でもその牛乳の模様が北海道だったとかは噓なんだけど。それもお母さん、そうなんだねって聞いてくれたの。嬉しかった、嬉しかったけど、なんかからっぽな感じがしちゃった。僕が噓ばっかついてるからなのにね。それでなんとなくお母さんの前にいるのが嫌になっちゃって、友達と約束あるって噓ついて、お家から走って出たらあの高校の近くの交差点でひかれちゃった。そのあと僕はプヤになったからぴょんぴょんしながら、お母さん見てたらね、お母さん笑ってたの。他の人に泣かないのって言われても笑ってたの。笑ってて欲しいって言ったのは本当だけど、本当は泣いてて欲しかったのに。僕のこと大好きなら悲しいってなると思ってたのに。お母さんはずっとにこにこだった。大好きなお母さんの顔なのに、寂しくて、でも寂しくないって思いながら、僕は高校でぼんやりしてたんだ。そこに杏お姉さんと涼お姉さんとププが来て、1人じゃなくなって、嬉しかった。でも本当の僕なんて笑って貰えないくらい普通の子供だから、噓ばっかりついちゃうんだ。仕方ないんだ、分かってくれてると思ってた。でも真剣にって言われちゃって、真剣になったら空っぽがバレちゃうと思って逃げちゃった。そしたらまた1人になっちゃった。
「快兎!!」
急に声がして振り返ったらお姉さんたちがいた。周りは木ばっかりなのに、なんでかお姉さんたちがいたの。杏お姉さんが抱きしめてくれた。抱きしめかえしたら、初めてお姉さんに触れたんだ。びっくりした。びっくりしたらなんか泣いちゃったんだ。大丈夫って寂しくないって思ってたのに、もう噓つけなくなっちゃった。杏お姉さんはなんでか泣いてた。墓地で僕のお母さんと会ったんだって。僕のお墓がここにあることなんて知らなくて、僕お母さんが泣いてないの見てすぐ高校に引きこもっちゃったから……。そしたらお母さん、泣いてたんだって。もうそろそろ僕も天国に居るだろうから泣いてもいいかなって思ったんだって。僕のことはププが探してくれて、お姉さんたちを連れてきてくれたらしい。ププ無口だから全然気づかなかった。なんか僕、もう噓つくのやめようって思った。もういいやって、しーらないってなった。だから僕、お姉さんたちに言ってあげたの。
「寂しくないもん、噓じゃないもーん」
って。最後に教えてあげたの。そしたらお姉さんに触れなくなって、お姉さんたちがだんだん遠くに言っちゃって、緑しか見えなくなっちゃったんだ。こんなの寂しくなっちゃうじゃん。
あーあ、結局また嘘つきになっちゃった。
僕は快兎(かいと)、その辺の小学生だよ!ある日、僕の事が見えるって言うお姉さん2人組と、ぼーっとしてて人なのかもよくわかんない人(?)が来たんだ。僕と、そのよくわかんない人(ププっていうらしい)はプヤでね、んーっとね、簡単に言うとお化けとかゆーれーとかそういう感じ。そしたらお姉さんたち、悪さをしてるプヤをどうにかしたいって言うから、居場所を教えてあげたの。僕、偉いでしょ。そしたら松本っていうヤンキーみたいな怖くて嫌な感じの人が居て、廃校舎から出せとかなんとか言っててさ、でもなんかそれが面白くてぴょんぴょんしてたらお姉さんたちに怒られちゃったんだ。だからもう僕、あいつの事は知らなーい。なんか赤いカーペットとかそういう話してて、しかもサイトウとか言うこんなに無害な僕の事まで消そうとする人と色々してたけど、それはたぶんお姉さんたちが説明してくれるからいいよね。てか怒られなくても普通に嫌な感じの人だったもん、僕どーでもいい。きょーみなーい。あとなんかププは、全然記憶ないらしくて、ちょっとずつ取り戻していったみたいなんだけど、正直難しすぎて僕よくわかんなーい。小学生だもん。だから、嫌な感じの松本も、変なサイトウってやつも、ププも僕の担当外なの。だから僕は僕の話だけするね。これはね、松本のことが色々終わって、新しいプヤが出てきて、なんかププがちょっと新しい記憶取り戻したりしたくらいのお話。
新たなプヤが裏山に現れたと聞き、2人とププと快兎は向かった。快兎とププはいつも通り2人に付いていっただけだったが、それでも快兎の自由奔放さと、淡々としたププの言葉は今回も役に立った。ただ少しお堅い案件で、苦しい案件だった。弁護士と医者の両親のもとに生まれ、何もかもを与えられ、進む道は弁護士か医者かの二択だった青年。決して悪い両親ではない。真っ直ぐに青年を見て、真っ直ぐに言葉を伝え、真っ直ぐに進むように導く聖人のような親だった。ただ、一つ青年の心を蝕んでいたのは孤独だった。世間的に見れば何不自由のない優秀な青年。だが青年からしてみれば、周りが普通に持っているものだけが足りない。形だけ、外側だけがある、空虚を抱えていると思っていた。物事を始めるときに形から入ると言うが、それに近いものを感じていた。
事が起こったのは、大学受験だった。青年は優秀で、難関大学も合格間違いなしと言われていた。青年もそのために努力をし、自分なりにどの道に進むか将来を見据え勉強に励んでいた。ただ受験当日、青年は無理が祟ったのか熱を出した。両親は受験は後期でも浪人でも構わない、今は風邪を治そうと声を掛けた。凄く当たり前のコミュニケーションだった。その数日後、熱が下がり裏山で青年は自殺した。昔別荘地だったそこは、青年の中での温かな家族の思い出が最後にある場所だった。今はただの森となり、寺院が付近の墓地と共に管理する土地となっていた。そこにプヤとなった青年は佇んでいた。荒れた墓地を綺麗にするのが日課で、逆に綺麗な墓地を汚くするのも日課だった。やはり青年は孤独だった。彼の墓地もそこにあった。毎週お手伝いさんによって磨かれていた。月命日には両親が来ていた。それでも彼の孤独は満たされず、ただその度に青年は墓を汚した。ただ彼は、両親に自分のことを心配して欲しくて、自分のことを両親の手で何かして欲しかった。子どものような純粋な願いだった。ただ、それを両親には大丈夫と言う言葉でごまかしていた。気付いてほしかった。優しい噓で、自分を護るための嘘だった。結局、両親に墓を磨いて貰うと、青年のプヤは儚く散った。いわゆる成仏したのだ。この間に、両親を探し出したり、両親にそのことに気付かせるために2人とププと快兎が奔走したが、その話はまたどこかで。
そのあとだった。杏は少し沈んでいた。誰も悪くないことで、誰かが死んで、プヤになって悪さをして、そして居なくなる。その事実が杏にとっては苦しかった。プヤを救っても、人を救えないという現実を感じた。それでもプヤを救うことは無駄ではないと、ただプヤを救いたいという気持ちに嘘はないと、決意を新たにした。そこでまずは、近くに居る快兎に目が行った。行動を共にしている割に彼のことが見えていなかったからだ。
事件が終わって、プヤも成仏して帰るとこだった。そしたら杏お姉さんがいきなり「なんでそんなに嘘ばっかり言うの?」って言ってきたんだ。ここで僕はいつも通り、「噓じゃないもーん」って答えたの。でもなんか今日は杏お姉さんはそれじゃ許してくれなかった。「真剣に答えなさい」って、裏山で怒鳴られちゃった。たぶん、僕だけのらりくらりしてて、お姉さんもちょっとイライラしちゃってたんだと思うんだ。でもそんなの僕だってよくわかんないし、どーしようもないじゃん?こんな性格急に変えられないし、そもそもお母さんのせいだもん…。とにかく僕悪くないの!なのに怒鳴ってくるから「僕もう知らない、一緒に居なくていいもん」って言って走って山奥まで来ちゃったんだ。
杏は救おうと手を伸ばしたつもりが、子供を少し𠮟るつもりが、子供の心を閉ざしてしまったことに気付いた。慌てて涼とププと共に追いかけようとするも、木々が多く人間には難しい道だった。足があるとかなんとか快兎本人は言っているが、実際はプヤだ。透けていて、体も物とはぶつからない。プヤ自身に接触の意思が無い限り、物はすり抜けるのだ。ただこの奥は道も整備されていない山奥。このまま進むとどこに繋がっているのか、土地勘のある杏にもあまり見当がつかない。山奥すぎて、誰も足を踏み入れないからだ。それでも杏は諦めきれなかった。一度近付いたプヤだ。今更見捨てることも出来ない。それにプヤとはいえ、快兎はただの子供だ。まだまだ快兎は1人になることを嫌う。平気な顔をしながら、何かと理由をつけて私たちの足を止めさせる。でも快兎は素直じゃないから、直接待ってとも一緒に居ようとも言わない。こちらから、一緒に行こうと言えば大人しく付いてくる。どうしたいの?と聞くのは快兎には悪手だと行動を共にしていて気付いていた。なんで、も快兎には向かないことを経験から気付いていた。それなのに焦って、自分の疑問をぶつけてしまった。快兎は素直じゃないが、結局は素直だ。やりたくないことは嫌な顔をするし、やりたいことには目を輝かせるし、自分が出来ることには勝手に向かっていく。そして、自分の意思を貫く。言葉は素直じゃない。こちらが導いてあげないと、極度の天邪鬼だから、嘘ばっかりつくから。あ、そうか、その嘘は、自分が言わなくても気付いてほしいその表れなのか。さっきの青年のプヤもそうだった。ただ自分の事を見て欲しかった。でも言って、それが伝わらなかった時が怖いから。嘘をついてへらへらして、傷つかないようにしていたんだ。
結局山奥まで来ちゃった。ここがどこか分かんないし、どうやって戻ればいいかも分かんない。怖い、いや怖くないもーん、僕平気だもん、大丈夫だもん、うん。なんで噓つくのとか言われたの初めてだったなぁ。お母さんは、嘘を全部信じてくれた。お母さんは全部僕の言うことをうんうんって聞いてくれてた。凄いねって。ドラゴンの話も、学校でいじめっ子に勝った話も、この前公園で有名人に話しかけられたのも全部、そうなんだって信じてくれてた。全部全部噓なのに。そうだったらいいなって思った、僕のただの空想なのに。最初に嘘ついたのは、お母さんが熱出しちゃったとき。元気出して欲しくて、その熱は地球の奥の奥に居る魔物のせいだから、お母さんは悪くないんだって言ったの。治った時にはね、昨日僕がその魔物倒したんだって言ったの。そしたらありがとうって、快兎のおかげで治ったよって喜んでくれて、それが嬉しくて、嘘ってにこにこになるんだって思った。それからいっぱいお母さんに笑って欲しくて、いっぱいいろんな話をした。でもそしたら急に怖くなっちゃった。それでなんとなくお母さんに聞いたの。僕が死んじゃったらお母さんはどうする?って。そしたらお母さん、どうしてほしい?って言ったの。だから僕は、お母さんが笑ってるのがいいなって思って、笑ってて欲しいって言った。でも本当は悲しんで欲しかった。でも言えなかった。ある日いつも通りお母さんに学校であったことをいっぱい喋って、でも半分くらいは嘘で、あ、牛乳こぼしたのは本当だよ、でもその牛乳の模様が北海道だったとかは噓なんだけど。それもお母さん、そうなんだねって聞いてくれたの。嬉しかった、嬉しかったけど、なんかからっぽな感じがしちゃった。僕が噓ばっかついてるからなのにね。それでなんとなくお母さんの前にいるのが嫌になっちゃって、友達と約束あるって噓ついて、お家から走って出たらあの高校の近くの交差点でひかれちゃった。そのあと僕はプヤになったからぴょんぴょんしながら、お母さん見てたらね、お母さん笑ってたの。他の人に泣かないのって言われても笑ってたの。笑ってて欲しいって言ったのは本当だけど、本当は泣いてて欲しかったのに。僕のこと大好きなら悲しいってなると思ってたのに。お母さんはずっとにこにこだった。大好きなお母さんの顔なのに、寂しくて、でも寂しくないって思いながら、僕は高校でぼんやりしてたんだ。そこに杏お姉さんと涼お姉さんとププが来て、1人じゃなくなって、嬉しかった。でも本当の僕なんて笑って貰えないくらい普通の子供だから、噓ばっかりついちゃうんだ。仕方ないんだ、分かってくれてると思ってた。でも真剣にって言われちゃって、真剣になったら空っぽがバレちゃうと思って逃げちゃった。そしたらまた1人になっちゃった。
「快兎!!」
急に声がして振り返ったらお姉さんたちがいた。周りは木ばっかりなのに、なんでかお姉さんたちがいたの。杏お姉さんが抱きしめてくれた。抱きしめかえしたら、初めてお姉さんに触れたんだ。びっくりした。びっくりしたらなんか泣いちゃったんだ。大丈夫って寂しくないって思ってたのに、もう噓つけなくなっちゃった。杏お姉さんはなんでか泣いてた。墓地で僕のお母さんと会ったんだって。僕のお墓がここにあることなんて知らなくて、僕お母さんが泣いてないの見てすぐ高校に引きこもっちゃったから……。そしたらお母さん、泣いてたんだって。もうそろそろ僕も天国に居るだろうから泣いてもいいかなって思ったんだって。僕のことはププが探してくれて、お姉さんたちを連れてきてくれたらしい。ププ無口だから全然気づかなかった。なんか僕、もう噓つくのやめようって思った。もういいやって、しーらないってなった。だから僕、お姉さんたちに言ってあげたの。
「寂しくないもん、噓じゃないもーん」
って。最後に教えてあげたの。そしたらお姉さんに触れなくなって、お姉さんたちがだんだん遠くに言っちゃって、緑しか見えなくなっちゃったんだ。こんなの寂しくなっちゃうじゃん。
あーあ、結局また嘘つきになっちゃった。