作品をよむ - ID:6 - toKnow

プヤ交流

パズルのピース
No. 6
 2213195 後藤健士

「あのプレイ ヤバくない?超(ノ・ω・)ノオオオォォォ可愛イイぃぃぃ!!!!Σ(゚Д゚)」

小鳥遊杏は、正真正銘の天賦の才を有していた。
その才とは、普通の人間には目視できぬ、プヤが見える。
そういう安っぽい漫画の設定の世界に生まれたならば、どれほど人生は愉快で極楽であっただろう?
 けれども、現実は残酷である。彼女はなんの才能も無いただの卑俗な糞の少女であった。それどころか、名前は動物のように可愛らしい癖に、顔は同年代のほかの少女たちに比べてお世辞にも可愛いとはいえぬ。このルッキズムのご時世、女子に生まれて、美しくない、可愛くないだけで将来の御先は真っ暗だ。
あああアア、整形しよっかなあ_| ̄|○。
つっても、彼女の貧しい家にはそんな潤沢な資金などもあろうはずがない。
そんな哀れを絵に描いたような彼女にとって唯一の楽しみは、絵本や漫画など物語の世界に慰みを求めることだけだった。その世界に没頭するときだけ、この現実の退屈さ、空虚さ、己の身体性、絶望的な容姿から解き放たれ、自由になることができる。
彼女には何も無かった。空っぽだった。しかしそれは完璧な絶望を意味はしない。
人間という動物は、絶望の果てにも一縷の希望を見出す生き物なのだから。
彼女の何千年前の祖先も、現代の発展したテクノロジーの無き地獄のようなこの世界を、宗教やら伝承やら物語を語り継ぎながら、
他の畜生とは違って天より授けられた脳髄と心を頼りにして、儚い命を繋いできたのだ。

彼女は新月のように陰翳に染まった己の心を満たすように、想像力の翼をぐんぐん成長させていった。そしてついには己自身により創り出されだ架空の夢物語こそ、本当の現実だと錯覚するまでに至っていた。そんなマア、いわゆる厨二メンヘラ魔法少女を、周りの同級のクラスの少女やクラスメイトは当然ヤバい奴認定し、ドン引きしていた。
しかし、捨てる神あれば拾う神あり、そんな少女の奇妙さを、餓鬼特有の純真無垢な好奇心で、遊び半分に関わってくる少年がいた。その名を結城涼という。彼もまた、爽やか陽キャクラスの一軍かとおもわれる名前を冠しながら、実際はスクールカーストの底辺よりちょっと上ぐらい、オタク、ナードといわれるポジションに属していた。ダサいまん丸眼鏡と、マンマが買ったセンスのいい似合った学生らしい洋服を素直に着ることはなく、生意気に独自性をだし時代おくれのノースリーブ、短パンを堂々と着まわしていた。
 彼女はある日、両親を暴走運転のバイクに激突され、憎しみと怒りのあまり、
血の涙を流しながら、万華鏡写輪眼を開眼した。
ゆえに幻をも現実と思わせる特殊な瞳力によって、見つめた相手にでっちあげの幻影をみせる幻術を使用できるようになった。
 プヤとは何なのか、杏自身にもよく分からない。解るはずがない。彼女の
が生み出した、超常の怪異なのだから。ただ、ぷやぷやと宙を漂うそれらは、時折人の形をしていたり、妙に愛らしい畜生の姿をしていたりする。そして今日、杏はひとりのプヤを見つけた。
「あのプレイやばくない!!?超かわいい!」
「あっ、待って!」
 杏は駆け出した。隣にいた結城涼は、慌ててその背中を追いかける。
「ちょっと杏! 今度は何!?」
 返事はない。杏はいつだってそうだった。気になるものを見つけると、自分のことも周りのことも忘れてしまう。だからこそ涼は、そんな杏を放っておけなかった。
 校庭の隅で、杏はようやく立ち止まった。
 そこにいたのは、みすぼらしい身なりのホームレス男だった。
「……誰?」
 涼が眉をひそめる。男は二人を無視して、虚空に向かって話しかけた。
「いたいた。君、プヤだろう。退治しに来たんだ」
 杏の視線の先には、白くて丸い、おばけのような何かが浮かんでいた。
「退治? ぼくを?」
 プヤは首を傾げた。
「そう。だって君は死んでるんだから」
 男の言葉に、プヤはぽかんと口を開けた。生きていた頃の記憶も、自分が死んでいるという自覚もないらしい。
「こんなに可愛いのに、悪さなんてするはずない!」
 杏が声を上げる。男は初めて彼女をまともに見た。
「……君、見えるのか?」
 驚いた様子の男は、涼にもプヤが見えるようになる眼鏡を渡した。
 こうして三人と一匹の奇妙な関係が始まった。プヤの専門家を名乗るホームレスの男は、虚空に、プヤに話しかける。プヤの専門家の男は、杏が救おうとしているそのプヤを退治しに来たというのだ。それに困惑するプヤ、そして杏と涼。更に畳みかけるように専門家の男は続ける。「なぁ、君は死んでるんだ」と。尚困惑しつつ、プヤは生きていた頃の記憶も、そもそも死んでいることも、自分がプヤである自覚も無いことを説明する。それでも退治する言う専門家の男に対し「こんなに可愛い見た目のプヤが悪さするはずない」と口を開いた杏に今度は専門家の意識が向く。プヤが見えるという杏に専門家は驚いた様子だった。涼にはプヤが見えないことを知ると、プヤが見えるようになる眼鏡を授ける。その動機は分からないが、涼にとっては好都合だった。
プヤが見えるようになった涼だが、杏の普段の行動をなんとなく信じていたこともあり特に動揺しすぎることもなく、杏と共に記憶のないプヤと関わる。
 記憶のないプヤはもちろん名前も覚えておらず、2人が名付けることとなる。涼はスーパーアレクサンドロス5世という、偉人とスーパーサイヤ人を融合させた壊滅的なネーミングを付けるが、杏が否応がなしに却下した。記憶のないプヤには、杏が「ププ」と放屁のような下品な名をつけた。いわゆるおばけのようなフォルムで2人の周りをぷやぷやと漂っている。記憶がない割には冷静で落ち着いていて、どこか2人を手助けするような、専門家の男が言う退治とはかけ離れた印象のプヤである。

 
 ププは妙に落ち着いたプヤだった。悪さをするように杏には思えない。二人は悪いプヤがいるという旧校舎へ向かった。
 そこで出会ったのは、快兎と名乗る餓鬼の少年だった。自分は生きていると主張しながら、いつからここにいるのか尋ねれば「昨日」「一昨日」「一カ月前」と答えが変わる。過去、現在、未来を貫く記憶が曖昧なのだろうか。嘘つきだが、どうやら危険ではないらしい。
 快兎の案内で二階へ進むと、透けたヤンキー姿の未成年の青年がいた。顔色は蒼白で、眼光はいたずらに炯々とし、芥川の自殺前にとられたタバコをくわえた写真を想起させた。
ボロッちい学ランを着用しており、背中にはと四文字の痛ましい刺繍がほってある。松本というそのヤンキークソ餓鬼プヤも記憶を失い、地縛霊となっていた。
「あ なた は どう して ここ に いる の?」
「いや、 知 ら ない、 俺、 自 爆 霊 だから。 なんか 生 ま れた と き から、 ここ に 生 ま れた ときから、 死 んで るから。 ここ に なんか いる んだ けど、 ず っと 動 け ね え んだ よ、 この 旧校舎から」

 そこへ現れたのは、あのぷや慈善団体だかなんだか怪しい宗教団体に所属する専門家の男、齋藤龍だった。
「なんだ、てめえええええ!!やんのか、コラああああアア!?」
たかしは己のテリトリーを荒らされた獣のように猛り狂って吠えた。しかし相手はぷや専門家。そんな緊急事態でも慌てることなく退治の業をもっていた。

 齋藤は松本の魂を抜き、無残にも二度目の死を与えた。プヤは二回死ぬことがあり、二回目の死の後は記憶を失い、存在感が徐々に薄れていく。その先にはぷやの三度目の死、人間のときから数えて四度目の本当の死、つまり消滅があるという。
「マ ッ チャ ン、 これ どう な っちゃ う の?」
「松 本 さん は 死 んだ、
死 んだ、
もう 死 んで る の に、
二 回 死 んだ 」
「マ ッ チャ ン は 二 回 目 だ。」
え 二 回 死 んだ ら どう な っちゃ う の?」
「二 回 死 んだ ら 地 獄 で 舌を 抜 か れ んだ よ。」
「舌を 抜 か れ。」
喋 れ なく な っちゃ うん じゃない?
「もう こ いつ は ただ 抜 け 殻 だ よ。」


「そんなの、助けなきゃ!」
 杏は叫んだ。今の私はおとぎ話のヒロインなんだから、こんな薄汚い気持ち悪いヤンキーにも手を差し伸べる責務がある。しかし松本は校舎から出られない。取り壊しが迫る旧校舎で、二人は手掛かりを探した。
 学校新聞には、松本がかつていじめの加害者だったと記されていた。さらに快兎が口にした七不思議を頼りに調べると、松本の首には紐の痕が見つかった。
 松本はなぜ死んだのか。そして、どうすれば救えるのか。
 涼は小さく息を吐き、杏の隣に並んだ。
 無茶だと分かっている。それでも、目の前で消えようとしている命を見捨てることはできなかった。
 たとえ相手が、死んでいる存在だったとしても。
だってえええ、プや消えっちゃったら、わたしも夢から醒めっちゃうもーん。
「そんなに助けたいのかい?仕方ないなあ、わたしも鬼じゃない、わたしの所属する
プヤ教の組織のあるアジトにくれば、成仏の方法を知っているひともいるかもしれない。
糞餓鬼ども、たかしを連れて、俺様についてこいや!」
「でもたかしは地縛霊だから移動できないよ」
「レッドカーペットしけばいいんじゃボケ」
「さっさともってこいよお前らぁ」松本は立場をまきわえず、懇願する。屑である。
「レッドカーペットってどこにあるの」
「体育館で卒業式で使われてた気がする」

杏と涼は大特急で体育館からレッドカーペットを盗んできた。
「みんなで門までしくぞー、えいえいオー!」無意味な協調性をいかんなく発揮し、
なんとか、たかしの王道を創生し、一同は学校を抜け出した。
「でも学校を抜け出してどこへいくの」
「おれさまのアジトだ、さあついてこい」
斎藤龍についていき、怪しいプや教会の本部に突入する餓鬼軍団とプや。

教会の本部で一同はプやの恐るべき真実をしることになった。

プヤとは人間が一回死ぬとなるが、実は普通の人間はプヤにならず無事 浄土、あの世に逝くのがほとんどだが、この世に強く執着を残していたり悪行をなした人間は悪因悪果により、浄土に成仏せず、プやの姿になってこの世に永遠に縛られつずける。

一度目の死でプヤは地獄道、二度目の餓鬼道、三度目は畜生道になり、己の悪行を認め、
自我の執着を断たなければその三つの世界を廻りつずけるのだった。
はたしてプヤの運命はいかに――。