リスキーダイス
No. 6
「なんか願いを込めてこのサイコロを振ったら本当に叶うんだよ」
「信じられないかもしれんけど本当なんだよ」
しゅんやたちは、諦めて喋りだした。
「そんなの信じられるわけないじゃない」
「大人をからかうのはやめろ」
外野からはまるで信じていないという声が聞こえてくる。
「なら証拠を見せてやるよ」
しゅんやが目の前でサイコロを持って構える。
「1万円が欲しいぃーー」
そう叫びながらサイコロを振り出した。当然のように当たりの目でとまった。
「こんなので1万円手に入ったらやばいでしょ」
「そうよ、もう誰も働かなくなるじゃない」
女子たちは、次々とヤジを飛ばしている。
サイコロが止まって3分ほどが経過した。
それまで張り詰めていた空気を、担任の先生がかき消した。
「やっぱり、何もおこらないじゃないか。あまり人をからかっちゃダメだぞ」
そう言って先生は教室を後にした。
「ち、ほんとじゃねぇのかよ」
去り際に放った一言は、生徒達には聞こえなかった。
教室の扉が閉まる音共に女子たちの口も動きだす。
「なによ、やっぱしなんも起こらないじゃない」
「からかうのはやめて本当のことを教えなさいよ」
うるさい女子たちをあしらいながら帰る準備を始める。
「え、、、」
しゅんやが机に手を入れたまま声を上げる。
「1万円入ってんだけど」
しゅんやが1万円を驚き半分と、やっぱりなと自信半分でとりだした。
「これが証拠だ」
「机の中にたまたま入ってるなんて普通はありえないよな」
ニヤニヤした男子がつけあげる。
「まさか本当だったの」
「仕込みじゃないでしょうね」
「信じられない」
怪しいと思いながらも驚いている女子たち。
「これで本当だって信じてくれたな」
しのんが自信満々で答えた。
その日はそのまま帰ることになったが、しゅんやは心のどこかで思っていた。
もし、今持ってるサイコロの噂が広まってしまったら、俺を殺してでも奪い取ろうとする人も現れるかもしれん。盗られてサイコロがヤバいことに使われたら。
家に帰っても思考はまとまらなかった。
今は俺が代表で持ってるけど、この先誰が裏切るかわからない。もしかしたら身近のやつがそうかもしれないな。
あれこれ考えているうちに寝てしまい学校に行く時間になっていた。
「おはーー」
「ういーー」
しゅんやが昨日考えたことは、特には起こらない平和な朝であった。きっと自分の考えすぎなのだろうとしゅんやも内心安堵していた。
「朝のホームルームはこれで終わります。あとしゅんや、今日の放課後先生のところに来て」
側から見ればなんら変哲もない締めではあるが、しゅんやだけは違った。
なぜ昨日あいつらに見せてしまったんだ。あまりにも浅はかな行動すぎる。他の2人にこの事を話せるわけもないし。特に、横川先生、あいつは信用できない。
どうする。
どうする。
あれこれ悩んでいると人間は正常な判断ができなくなってしまう。あるいは正常な判断がわからなくなってしまう。
しゅんやが悩み抜いて出した答えは当然正常ではなかった。
横川を殺そう
たどり着いた答えはこれであった。
次に、どうやって殺すかである。あまりにも不自然すぎると自分が疑われてしまう。いかに仕方ないかと思わせることが必要である。外死因は出来るだけ避けたい。自殺、他殺、事故というのはサイコロで操ったのではと、あいつらに疑われてしまうリスクがある。災害を起こすというのも考えてみたが、厳しいだろう。とすれば一番良いのは病死である。
しかし、先生の持病や体質をもちろん知っているわけではない。とすれば突然死のような状況が自然でいい。脳卒中、動脈疾患、心筋梗塞、他にもいろいろ存在するが、しゅんやは死因の全体の七割を占めている心臓病に決めた。あとは実行するのみ。
四時間目の授業が終わり、お昼ご飯の時間となった。
「ちょっと腹痛いから先食っとっていいよ」
「おっけい」
上手く言い訳をつくって教室を抜け出すことに成功した。後は後ろから誰かついて来ていないか確認しながら、空き教室に向かう。
「誰もいねぇよな」
ビクビクしながら、明かりのついていない教室に入っていく。
「もうやるしかないんだ」
「何をやるのー?」
後ろから絶対に聴こえてはいけない声が聞こえてきた。しゅんやの心臓は、サイコロを振ってないのに止まりかけた。
「な、な、な、なんでいるんだよ。ももな」
「なんか保健室で休んでた帰りにしゅんやが入っていくの見えたんだよね」
「で、何しようとしたの?なんか人でも殺すんかって覚悟感じけどー笑」
?????????????????????????
しゅんやは気が動転する寸前だった。なぜももながいるのか、なぜサイコロを振る理由を知っていそうなのか、今のしゅんやでは冷静に考えることなんて不可能に近かった。だが、たった一つだけ理解できたことがある。横川が死んで一番に疑われるのは自分であること。
「まぁ、そんな言うべきことじゃねえよ、早く教室に戻りな」
「何それー、いーじゃん別に減るもんでも無いんだし、教えてよー」
人の命が減るんだぞ、もしかしたらお前の命も。なんてツッコミが頭の中で出来るくらいにはしゅんやは回復した。こうなったら、考えられることは三つ。嘘をついて誤魔化す。ももなを仲間に引き入れる。ももなも殺してしまう。どれが一番良い選択なのだろうか。
「いや、男は誰しも知られたくない秘密が一つくらいあるんだよ」
「何それ、いーよー私誰にも言わないし、私口硬いほうだよ」
「それでも、ももなに知られてしまうじゃん。それだと意味ねぇよ」
「えーー、めんどくさいなー。言ってくんないとみんなにしゅんやがなんか秘密あるってバラまいちゃうよ」
それだけはまずいと、しゅんやは焦った。誰にも知られないようにしたのにこれだと本当に意味が無くなってしまう。このじゃじゃ馬を仲間にするには不可能だとしゅんやは悟るりだが、同級生を殺すのにも抵抗はまだ残っている。やはり嘘で誤魔化すしかない。
「実は、ひまのことが好きでさ、あいつと付き合いたいって願おうと思ったんだよ、本当に絶対誰にも言うなよ」
「え、まじ!!めちゃくちゃおもろい情報ゲットしちゃったーー。でも、ひま彼氏いるよ」
「知ってるよ、だからサイコロで別れさせようとしたんだよ。最低な願いだから誰にも見られたくなかったし、あんなに力入ってたんだよ。」
「そうだったんだー、止めて悪かったのか、良かったのか分からないね」
「いや、良かったよ、好きな人の不幸を願うなんて最低だ。お前が来てくれて良かったよ」
「私なんもしてないけどねー、まぁひまじゃなくてもいい女の子いるよー」
「そうだな、ありがとよ。おれはもう少し落ち着いてから教室帰るよ」
「おっけい、まぁ、今の話は二人の秘密ということで、誰にも話さないから安心してー」
そう行ってももなは教室を後にした。
危なかった。
しゅんやは自然に何度もその言葉が口から出てきた。咄嗟の嘘で何とか誤魔化せたのもそうだが、何よりも今の今まで話していた同級生を殺しかけていた事に。人を殺すという、命の重さが今ごろしゅんやの脳みそに乗っかってきた。
ほんとにおれは今から人を殺すのか。同級生ではないにしろ、ほぼ毎日会っている人を。大人だからって信用出来ないと決めつけていた。話し合えば分かり合えるかもしれない。
しゅんやは考えを改めて空き教室を後にした。
その考えが三時間後全く違うものになっているとは知らずに。
結論からいえば、横川という男はとてもヤバい人間であった。サイコロで金、女、名声を手に入れて悠々自適に暮らしたいと、逆らうものもサイコロでどうにか出来るため無敵であることも。長々と人間の欲望を聞かされた。挙句の果てに私はバイセクシャルであるため、君ともヤリタイナという衝撃的なことを言われた。それを聞いた瞬間にしゅんやは逃げた。動物に備わる本能のようなものがしゅんやを動かした。
すぐにあいつを始末しないといけない。これは人類のため、ひいては自分のために。
しゅんやは家に帰るとすぐにサイコロを振った。横川が心臓病で死にますようにと。
サイコロは当たりを示している。
その日、しゅんやは息を引き取るかのようにすぐに眠りについた。
翌日、しゅんやは珍しく親に起こされた。
「あんた、昨日学校から帰ってずっと寝てたわよ。全くだらしないわね。」
「なんか昨日めっちゃ疲れたんだよ」
「まぁいいわよ、それより今日学校休みだって」
「え、なんでなん」
「先生が亡くなってしまったんですって、心臓病で昨日急に、怖いわねー」
スマホの通知が溜まっていた。どうやら、クラスラインがものすごいことになっているらしい。
しゅんやは、最初こそ文字を読んでいたが、段々と吐き気がしてきてトイレに向かった。その後メッセージを読む気にはならなかった。自分が人を殺したという現実が突き刺さって来るからだ。
もちろん、こんな悩みを家族、友達に相談出来るわけはない。しゅんやにはこの先、人を殺したという事実が纏わりついてくる。
悩んでいるとしのんからラインがきた。
「今日学校なくなっちゃったしサイコロ使って遊ぼーぜ、サイコロのこと知ってる女子とかも呼んでさ」
しゅんやは今遊ぶこと、特にサイコロで遊ぶ気など起きるはずもない。しかし、家で一人でいると気が狂ってしまいそう。
「おっけい、時間はどする?」
「昼の12時とかにしよー、集まってまずは昼メシたべよー」
「おっけい、みんなに連絡頼むわ」
ふーーーー。。
しゅんやは、大きくゆっくりと息を吐きながらスマホを置いた。
あいつらにあってちゃんと振る舞えるのだろうか。
しゅんやの悩みは大きくなっていくばかりだった。
「先生が死んだのビビったよなー」
「ほんとにそう、ちょっとこわくなっちゃったよ」
6人組で近くのファミレスでご飯を食べている。
「サイコロ使ってさ、今日の昼メシ無料とかにしない?」
「そんなこともできるの?」
「多分よゆーだろ、なぁしゅんや」
「無理に決まってんだろ!!!」
「「「「「えっっっ」」」」」
しゅんやはやらかしたと、一瞬で理解することができた。
周りの奴らは固まっている。
「いやー、ちょっと考え事してて、ミスったわ笑」
誰も返事を返してくれない。普段明るく、ふざけているタイプの人間が、異常な行動を起こすと周りが壊れてしまう。もしくはもう壊れてしまっているのか。
「やっぱ先おれ帰るわ」
金を置いて、しゅんやは店を後にする。
もう全てがめんどくさい。
終わらせるか。
しゅんやはサイコロを振る。
このサイコロを知っている人間を全て殺してほしい。
しゅんやは目を疑った。
ハズレの目をサイコロが示していたのである。
今まで一度たりともハズレを出したことはない。
一体どうなるのか。
しゅんやは恐る恐る周りを見回してみる。
特に変わった様子はない。
街は異様な静けさで包まれている以外は。
家に帰ると返事はなかった。
鍵は空いてるのにと、家の中に進んでいると母が寝ていた。
なんだ昼寝かと思ったが、少し様子がおかしい。
音が聞こえてこない。寝返りをうつ様子や、呼吸、寝息一切が聞こえてこない。おかしいと思い母の胸に手を当てる。
音がしない。
しゅんやは発狂した。
しゅんやは暴れ回った。
しゅんやは考えた。
もしかしてさっきハズレを出したからか。
スマホを取りだしてみる。
ラインがものすごい量来ていた。
「おい、お前が帰ったあと、周りのヤツらが全員倒れたんだけど」
「なんか、みんな息してない。死んじゃってるみたい」
「お前なんかサイコロでしたのか」
「家に帰ったけど、母さんも妹も死んでんだけど」
「おい、なんか返信しろや」
「なんで、なんで、なんで、」
「りかいできないんだけど」
「今から生きてる人だけでお前ん家行くから」
ラインはここで終わっていた。
スマホを閉じた瞬間、ピンポンが家に鳴り響いた。
しゅんやはもうダメだった。
考えることも、動くことも出来ない。
ポケットのサイコロがこぼれ落ちる。
サイコロは転がる。
まるで意思があるかのように転がっている。
しゅんやの思考は止まったままだった。
翌日のニュースの見出しは決まっていた。
一人の少年が人を殺したと。
その少年が殺されたと。
しかし、ニュースを伝える人も、見る人も、
もうどこにもいなかった。
「信じられないかもしれんけど本当なんだよ」
しゅんやたちは、諦めて喋りだした。
「そんなの信じられるわけないじゃない」
「大人をからかうのはやめろ」
外野からはまるで信じていないという声が聞こえてくる。
「なら証拠を見せてやるよ」
しゅんやが目の前でサイコロを持って構える。
「1万円が欲しいぃーー」
そう叫びながらサイコロを振り出した。当然のように当たりの目でとまった。
「こんなので1万円手に入ったらやばいでしょ」
「そうよ、もう誰も働かなくなるじゃない」
女子たちは、次々とヤジを飛ばしている。
サイコロが止まって3分ほどが経過した。
それまで張り詰めていた空気を、担任の先生がかき消した。
「やっぱり、何もおこらないじゃないか。あまり人をからかっちゃダメだぞ」
そう言って先生は教室を後にした。
「ち、ほんとじゃねぇのかよ」
去り際に放った一言は、生徒達には聞こえなかった。
教室の扉が閉まる音共に女子たちの口も動きだす。
「なによ、やっぱしなんも起こらないじゃない」
「からかうのはやめて本当のことを教えなさいよ」
うるさい女子たちをあしらいながら帰る準備を始める。
「え、、、」
しゅんやが机に手を入れたまま声を上げる。
「1万円入ってんだけど」
しゅんやが1万円を驚き半分と、やっぱりなと自信半分でとりだした。
「これが証拠だ」
「机の中にたまたま入ってるなんて普通はありえないよな」
ニヤニヤした男子がつけあげる。
「まさか本当だったの」
「仕込みじゃないでしょうね」
「信じられない」
怪しいと思いながらも驚いている女子たち。
「これで本当だって信じてくれたな」
しのんが自信満々で答えた。
その日はそのまま帰ることになったが、しゅんやは心のどこかで思っていた。
もし、今持ってるサイコロの噂が広まってしまったら、俺を殺してでも奪い取ろうとする人も現れるかもしれん。盗られてサイコロがヤバいことに使われたら。
家に帰っても思考はまとまらなかった。
今は俺が代表で持ってるけど、この先誰が裏切るかわからない。もしかしたら身近のやつがそうかもしれないな。
あれこれ考えているうちに寝てしまい学校に行く時間になっていた。
「おはーー」
「ういーー」
しゅんやが昨日考えたことは、特には起こらない平和な朝であった。きっと自分の考えすぎなのだろうとしゅんやも内心安堵していた。
「朝のホームルームはこれで終わります。あとしゅんや、今日の放課後先生のところに来て」
側から見ればなんら変哲もない締めではあるが、しゅんやだけは違った。
なぜ昨日あいつらに見せてしまったんだ。あまりにも浅はかな行動すぎる。他の2人にこの事を話せるわけもないし。特に、横川先生、あいつは信用できない。
どうする。
どうする。
あれこれ悩んでいると人間は正常な判断ができなくなってしまう。あるいは正常な判断がわからなくなってしまう。
しゅんやが悩み抜いて出した答えは当然正常ではなかった。
横川を殺そう
たどり着いた答えはこれであった。
次に、どうやって殺すかである。あまりにも不自然すぎると自分が疑われてしまう。いかに仕方ないかと思わせることが必要である。外死因は出来るだけ避けたい。自殺、他殺、事故というのはサイコロで操ったのではと、あいつらに疑われてしまうリスクがある。災害を起こすというのも考えてみたが、厳しいだろう。とすれば一番良いのは病死である。
しかし、先生の持病や体質をもちろん知っているわけではない。とすれば突然死のような状況が自然でいい。脳卒中、動脈疾患、心筋梗塞、他にもいろいろ存在するが、しゅんやは死因の全体の七割を占めている心臓病に決めた。あとは実行するのみ。
四時間目の授業が終わり、お昼ご飯の時間となった。
「ちょっと腹痛いから先食っとっていいよ」
「おっけい」
上手く言い訳をつくって教室を抜け出すことに成功した。後は後ろから誰かついて来ていないか確認しながら、空き教室に向かう。
「誰もいねぇよな」
ビクビクしながら、明かりのついていない教室に入っていく。
「もうやるしかないんだ」
「何をやるのー?」
後ろから絶対に聴こえてはいけない声が聞こえてきた。しゅんやの心臓は、サイコロを振ってないのに止まりかけた。
「な、な、な、なんでいるんだよ。ももな」
「なんか保健室で休んでた帰りにしゅんやが入っていくの見えたんだよね」
「で、何しようとしたの?なんか人でも殺すんかって覚悟感じけどー笑」
?????????????????????????
しゅんやは気が動転する寸前だった。なぜももながいるのか、なぜサイコロを振る理由を知っていそうなのか、今のしゅんやでは冷静に考えることなんて不可能に近かった。だが、たった一つだけ理解できたことがある。横川が死んで一番に疑われるのは自分であること。
「まぁ、そんな言うべきことじゃねえよ、早く教室に戻りな」
「何それー、いーじゃん別に減るもんでも無いんだし、教えてよー」
人の命が減るんだぞ、もしかしたらお前の命も。なんてツッコミが頭の中で出来るくらいにはしゅんやは回復した。こうなったら、考えられることは三つ。嘘をついて誤魔化す。ももなを仲間に引き入れる。ももなも殺してしまう。どれが一番良い選択なのだろうか。
「いや、男は誰しも知られたくない秘密が一つくらいあるんだよ」
「何それ、いーよー私誰にも言わないし、私口硬いほうだよ」
「それでも、ももなに知られてしまうじゃん。それだと意味ねぇよ」
「えーー、めんどくさいなー。言ってくんないとみんなにしゅんやがなんか秘密あるってバラまいちゃうよ」
それだけはまずいと、しゅんやは焦った。誰にも知られないようにしたのにこれだと本当に意味が無くなってしまう。このじゃじゃ馬を仲間にするには不可能だとしゅんやは悟るりだが、同級生を殺すのにも抵抗はまだ残っている。やはり嘘で誤魔化すしかない。
「実は、ひまのことが好きでさ、あいつと付き合いたいって願おうと思ったんだよ、本当に絶対誰にも言うなよ」
「え、まじ!!めちゃくちゃおもろい情報ゲットしちゃったーー。でも、ひま彼氏いるよ」
「知ってるよ、だからサイコロで別れさせようとしたんだよ。最低な願いだから誰にも見られたくなかったし、あんなに力入ってたんだよ。」
「そうだったんだー、止めて悪かったのか、良かったのか分からないね」
「いや、良かったよ、好きな人の不幸を願うなんて最低だ。お前が来てくれて良かったよ」
「私なんもしてないけどねー、まぁひまじゃなくてもいい女の子いるよー」
「そうだな、ありがとよ。おれはもう少し落ち着いてから教室帰るよ」
「おっけい、まぁ、今の話は二人の秘密ということで、誰にも話さないから安心してー」
そう行ってももなは教室を後にした。
危なかった。
しゅんやは自然に何度もその言葉が口から出てきた。咄嗟の嘘で何とか誤魔化せたのもそうだが、何よりも今の今まで話していた同級生を殺しかけていた事に。人を殺すという、命の重さが今ごろしゅんやの脳みそに乗っかってきた。
ほんとにおれは今から人を殺すのか。同級生ではないにしろ、ほぼ毎日会っている人を。大人だからって信用出来ないと決めつけていた。話し合えば分かり合えるかもしれない。
しゅんやは考えを改めて空き教室を後にした。
その考えが三時間後全く違うものになっているとは知らずに。
結論からいえば、横川という男はとてもヤバい人間であった。サイコロで金、女、名声を手に入れて悠々自適に暮らしたいと、逆らうものもサイコロでどうにか出来るため無敵であることも。長々と人間の欲望を聞かされた。挙句の果てに私はバイセクシャルであるため、君ともヤリタイナという衝撃的なことを言われた。それを聞いた瞬間にしゅんやは逃げた。動物に備わる本能のようなものがしゅんやを動かした。
すぐにあいつを始末しないといけない。これは人類のため、ひいては自分のために。
しゅんやは家に帰るとすぐにサイコロを振った。横川が心臓病で死にますようにと。
サイコロは当たりを示している。
その日、しゅんやは息を引き取るかのようにすぐに眠りについた。
翌日、しゅんやは珍しく親に起こされた。
「あんた、昨日学校から帰ってずっと寝てたわよ。全くだらしないわね。」
「なんか昨日めっちゃ疲れたんだよ」
「まぁいいわよ、それより今日学校休みだって」
「え、なんでなん」
「先生が亡くなってしまったんですって、心臓病で昨日急に、怖いわねー」
スマホの通知が溜まっていた。どうやら、クラスラインがものすごいことになっているらしい。
しゅんやは、最初こそ文字を読んでいたが、段々と吐き気がしてきてトイレに向かった。その後メッセージを読む気にはならなかった。自分が人を殺したという現実が突き刺さって来るからだ。
もちろん、こんな悩みを家族、友達に相談出来るわけはない。しゅんやにはこの先、人を殺したという事実が纏わりついてくる。
悩んでいるとしのんからラインがきた。
「今日学校なくなっちゃったしサイコロ使って遊ぼーぜ、サイコロのこと知ってる女子とかも呼んでさ」
しゅんやは今遊ぶこと、特にサイコロで遊ぶ気など起きるはずもない。しかし、家で一人でいると気が狂ってしまいそう。
「おっけい、時間はどする?」
「昼の12時とかにしよー、集まってまずは昼メシたべよー」
「おっけい、みんなに連絡頼むわ」
ふーーーー。。
しゅんやは、大きくゆっくりと息を吐きながらスマホを置いた。
あいつらにあってちゃんと振る舞えるのだろうか。
しゅんやの悩みは大きくなっていくばかりだった。
「先生が死んだのビビったよなー」
「ほんとにそう、ちょっとこわくなっちゃったよ」
6人組で近くのファミレスでご飯を食べている。
「サイコロ使ってさ、今日の昼メシ無料とかにしない?」
「そんなこともできるの?」
「多分よゆーだろ、なぁしゅんや」
「無理に決まってんだろ!!!」
「「「「「えっっっ」」」」」
しゅんやはやらかしたと、一瞬で理解することができた。
周りの奴らは固まっている。
「いやー、ちょっと考え事してて、ミスったわ笑」
誰も返事を返してくれない。普段明るく、ふざけているタイプの人間が、異常な行動を起こすと周りが壊れてしまう。もしくはもう壊れてしまっているのか。
「やっぱ先おれ帰るわ」
金を置いて、しゅんやは店を後にする。
もう全てがめんどくさい。
終わらせるか。
しゅんやはサイコロを振る。
このサイコロを知っている人間を全て殺してほしい。
しゅんやは目を疑った。
ハズレの目をサイコロが示していたのである。
今まで一度たりともハズレを出したことはない。
一体どうなるのか。
しゅんやは恐る恐る周りを見回してみる。
特に変わった様子はない。
街は異様な静けさで包まれている以外は。
家に帰ると返事はなかった。
鍵は空いてるのにと、家の中に進んでいると母が寝ていた。
なんだ昼寝かと思ったが、少し様子がおかしい。
音が聞こえてこない。寝返りをうつ様子や、呼吸、寝息一切が聞こえてこない。おかしいと思い母の胸に手を当てる。
音がしない。
しゅんやは発狂した。
しゅんやは暴れ回った。
しゅんやは考えた。
もしかしてさっきハズレを出したからか。
スマホを取りだしてみる。
ラインがものすごい量来ていた。
「おい、お前が帰ったあと、周りのヤツらが全員倒れたんだけど」
「なんか、みんな息してない。死んじゃってるみたい」
「お前なんかサイコロでしたのか」
「家に帰ったけど、母さんも妹も死んでんだけど」
「おい、なんか返信しろや」
「なんで、なんで、なんで、」
「りかいできないんだけど」
「今から生きてる人だけでお前ん家行くから」
ラインはここで終わっていた。
スマホを閉じた瞬間、ピンポンが家に鳴り響いた。
しゅんやはもうダメだった。
考えることも、動くことも出来ない。
ポケットのサイコロがこぼれ落ちる。
サイコロは転がる。
まるで意思があるかのように転がっている。
しゅんやの思考は止まったままだった。
翌日のニュースの見出しは決まっていた。
一人の少年が人を殺したと。
その少年が殺されたと。
しかし、ニュースを伝える人も、見る人も、
もうどこにもいなかった。