起
ごんざえもんパーク。この土地に住む者ならば、一度は行ったことのある遊園地
だ。市を一望できる観覧車に、大人も子供も楽しめるジェットコースター。色とりど
りのコーヒーカップに、メリーゴーランド。それ以外にも、先代が自らの目で選んだ
アトラクションが立ち並んでいる。先代の意向によって、入場料を払えば全てのアト
ラクションに乗れることができる遊園地は、他県からもたくさんの家族が来ていた。
時代と比べると現在は閑散としているが、時代の荒波にもまれながらも、地域の遊園
地として現在も家族連れが多く来場している。
【ごんざえもんパーク、五十周年】
ごんざえもんパークの新マスコットキャラクターについてのプレゼン資料を持参
した「中村」は、プレゼン資料の最終確認を進めていた。
斜め前にはマスコットキャラクターのキャラクターデザインを担当する新進気鋭
のデザイナーであり、中村の高校時代の同級生でもある「NAO」が座っている。有
名企業に採用されることもあるからか、不安で落ち着かない様子の中村とは違い、余
裕そうな表情だ。その向かいには、中村の同僚である「神宮寺」が机の上に置かれた
資料をパラパラとめくっている。すぐ横では、今年四月に新卒としてこの会社に入社
した「鈴木」がキョロキョロとあたりを見ながら何をすればいいのかを探っている。
見かねた経理担当の「飯田」がお茶の指示を出すと、鈴木はそそくさと給湯へと向か
っていった。廊下から社長の革靴の音と秘書である「権田」のヒールを鳴らす音が聞
こえてくる。その足音に、それまで腕を組みながら周囲を静観していた「骨川」が眉
をひそめた。中村が大きく息を吸い込む。その息を吐き終わった瞬間、音を立てなが
ら会議室のドアが開いた。今、会議が始まろうとしている。