原稿入力
戻る
ピース番号
名前
原稿
d2p
トオナ
「神子隠し 真相編」 ―戸田と楠村の結末と不浄阿頼耶の過去と正体― 戸田と楠村は誰にも頼ることはできないため、この島にある風習を探すことにした。風習を探すことによってピーちゃんの行方もわかるかもしれない。そう思った二人は風習の手がかりがありそうな飛鳥井神社に向かうことにした。しかし、戸田と楠村は飛鳥井夫婦に疑惑を抱いていたため、バレないように飛鳥井神社に忍び込んだ。 「戸田さん、飛鳥井神社で会話すると飛鳥井夫婦にバレる可能性があるので連絡は全てメールでお願いします。」 話しを聞いた戸田はメールで「了解しました」と返信した。 飛鳥井神社に着いた頃には夕暮れが過ぎ、辺りが真っ暗になっていた。戸田と楠村はスマホのライトを使わずに真っ暗な飛鳥井神社を探索すことにした。しかし、手がかりが見つからないため、二手に分かれることにした。戸田は飛鳥井神社の奥の森の方に手がかりを探した。何かないかと思い、探し続けると古びた倉庫を見つけた。倉庫を見つけたことを楠村に連絡すると先に入っておいてください。後で追いつきます。という連絡が来たので古びた倉庫に入ることにした。古びた倉庫には鍵はなかったため、簡単に入ることができた。戸田は音を立てないように慎重に扉を開けた。倉庫の中はあまりにも真っ暗であったため、仕方なくスマホのライトを使いながら、倉庫を探すことにした。倉庫に置いてあったものは古びたお釈迦様や飛鳥井神社に関する資料であった。何か手がかりがあると思い、戸田は資料を読もうと資料に手を差し伸べようとしたその瞬間、「ダメじゃないですか。勝手に倉庫に入るなんて」と背後を振り返ると飛鳥井咲葵が倉庫の前に立っていた。 「なぜここに?普段なら家に帰ってるはずじゃないですか?」と焦った様子で戸田は咲葵に問いかけた。咲葵は嘲笑うように言った。 「あなた達が小春を探しているから、もしかしてと思って倉庫に来たら本当にいるのなんて」 この言葉に戸田は少し違和感を感じた。ピーちゃんを探すために飛鳥井神社に来ていたが、そこまで警戒されるほどの行動をしてきたのか。(いや、違う。監視されていたんだ。飛鳥井神社から出た時に。しかし、誰が) 戸田は憶測で咲葵に協力者がいるのではないか、また、その協力者を見つけるためにどうすれば良いかと試行錯誤をした。とりあえず、このまま倉庫にいたら、閉じ込められてしまう可能性もあったため、倉庫から逃げ出そうとした。 (倉庫から逃げ出すためには咲葵さんをどうにかしないといけない。一か八かだが、賭けるしかない。) 戸田は倉庫にあった飛鳥井神社の資料を持って、駆け抜けるように走り出した。 「走り出すだけじゃ、私から逃れらないわ。」 「それはどうですかね?」と戸田はスマホのライトを咲葵の顔面に当てて、一時的な目眩しをすることによって倉庫から抜け出すことができた。 (この資料を読んで飛鳥井神社の秘密や島の秘密を暴かなきゃ。飛鳥井神社から離れた場所へ行かないと。) 戸田は飛鳥井神社からなるべく抜け出そうと必死になって走った。咲葵は自分よりも若い戸田に追いつけるわけもなく、戸田を見逃してしまう。飛鳥井神社から離れた港の方まで着いた戸田は一安心をしたが、一緒に行動をしていた楠村の行方を気にしていた。戸田は楠村の安否を確認しようとメールを送ることにした。教授は今どこですか?もしも、安全であるのであればメールをくださいという内容で送信した。しかし、数分待っても楠村からのメールの送信はなく、一安心だった戸田は急な不安感に襲われた。もし、飛鳥井神社まで戻ったら教授を見つけることができるかもしれない。だが、飛鳥井神社まで戻ったら咲葵に再び、襲われてしまう。このまま楠村を探さず、安心できる場所まで逃げれば、自分は助かるが楠村は助からないかもしれない。楠村を見殺しにしてしまうかもしれない。どうしようもない選択に戸田は頭を抱えた。考えて、考えて、考えても一つの選択をすることができなかった。ただ、その場所に突っ立て数分ぐらいの出来事だろうか。暗闇の中、見覚えのある顔が薄らと見え始めた。 「どうしたの?こんな真っ暗な港に一人でさ。」 とその声に聞き覚えもある。その顔と声はぴーちゃんの従兄弟の粕谷の姿であった。 「逆に粕谷こそ、港に何してるの?」 「僕はただ潮風に当たりにきただけさ。」 「そうなの。粕谷ってさ、あまり港の方に来ないのに珍しいね。」という戸田の言葉に粕谷の顔は少し険しくなった。何故、険しくなったのか戸田には分からなかった。 「それよりさ。手に持っているのは何?」 「これは別に何でもないよ。本当に何でもないよ。」とよそよそしい態度を戸田は取ってしまった。 「いいからさ。その手に持っているものを僕に見せてよ。ねぇ。」 「どうして、無言なんだい、ねぇ。」 「おい、いいからそれを見せろ。」 粕谷の口調は次第に荒くなっていき、普段からは感じ取ることのできないほどの態度であった。戸田は粕谷の様子が尋常ではないことを感じ取り、港から逃げ出そうとした。 「おいおい、このまま逃げられたら困るんだよね。咲葵さんに合わせる顔がないってもんだよ。」 「やっぱり咲葵さんと関わりがあったんだね。」 「おいおい、そんな嫌悪感が漂う顔で見ないでくれよ。僕だってこんなことしたくないんだからね。」 「でも、咲葵さんの為であれば、何だってできるのだよ。これは愛さ。愛なんだよ。愛‥」 (粕谷は正気の沙汰ではない。このまま、相手にしていたら、本当に死ぬかもしれない。) 「ねぇ、仮に私を捕まえてどうする気なの?」 「捕まえるなんて物騒なことはしないさ。僕と一緒に咲葵さんのもとに行ってもらうだけだよ。」 「それは捕まえることと何が違うのかな?」 「別にどう考えようと構わないさ、さぁ僕と一緒に来てもらおうか?」 「私が大声出したら、誰か助けに来るかもしれないよ。飛鳥井神社と違って港は人が住んでいるからね。」 「この時間の港には誰もいないことだってわかっているんじゃない。いたとしてもあの無能な警察ぐらいだろう。」 「それよりか、来てもらおうか。こんな長話しをしたいわけじゃない。」 戸田は話しをすることによって時間稼ぎをしていたが、もう粕谷には無駄なようだ。一体、どうすればいいのだろうか。肉体的に戸田よりも粕谷の方が優れている。走って逃げてもすぐ追いつかれてしまうだろう。大声を出したとして、この時間の港には粕谷が言ってたように人がいない可能性がある。この状況は戸田にとって詰みであり、万事休すである。だが、できることは大声で叫ぶことしかない。戸田は大きな声で助けを求めた。 「助けて!!!!」 「おいおい、無駄な抵抗はやめてほしいね。 乾井のときも面倒くさかったんだよ。」 「乾井くんになんかしたの‼︎」 「そんなに怒るなよな。乾は知りすぎた。だから排除した。それだけだよ。」 「知りすぎたってどういうことなの。乾くんに何をしたの?」 「乾井は小春をストーカーするほど好意を寄せていてさ、小春がいなくなった日からこの島に関しての噂に詳しかったせいか小春の失踪原因まで突き止めやがって。大変だったよ」粕谷は笑いながら、話しを続けた。「いや、ピーちゃん失踪とでも言っておこうか?アハハァァァ」 「だから、何をしたの‼︎」 「落ち着いてよ。小春の失踪原因を突き止めてさ、咲葵さんのところまで押し寄せてきて、ウザかったんだよね。だから、僕は咲葵さんを救うために乾井を殺した。」という言葉に戸田は固唾を飲むことしかできなかった。 「今まで、人を殺したことなかったけど、実際に殺してみると案外いいと思ったんだよね。なんかこう、解放されるってか。心地よいってか。何とも言えないあの感情。もう一度、味わいたいな‼︎」と言った直後にポケットの中から刃物を取り出し、小春へと襲いかかる。 「さぁ、僕と咲葵さんのために死んでよ。そして見せてくれよ、その身体から流れる血をさ。」 小春は一生懸命に逃げようとするが、逃げきれず、このままだと海に飛び込んでしまう。海に飛び込むしか方法がないのかと絶望に襲われ、目を瞑った時に銃声のような音が聞こえてきた。恐る恐る目を開くと、そこには血まみれの粕谷が横たわっていた。状況が掴めない戸田は辺りを見渡すと拳銃を持ったまま、煙草を吸っている不浄阿頼耶の姿がそこにあった。 「大丈夫かい?」 「えぇ、まぁそれよりこの状況は?」 「見れば分かるだろう。私が粕谷を撃った。君を守るためにね。」 その発言には普段、適当なことを言っていた刑事の姿ではなく、誰かを守るための正義感の強い刑事の姿がそこにあった。 「まぁ、ここはひとまず、駐在所に入るといい。話しはそこからだ。」と不浄に言われたため、とりあえず戸田は駐在所に入った。 「ここから,話しは長くなるが、しっかりと聞くように」とタバコの吸い殻をタバコ皿において真剣な顔で語り始めようとした。その前に戸田は気になっていたことを聞いた。 「粕谷君は血まみれで倒れてましたが、そのまま放置で大丈夫なのですか?」 「それに関しては問題ない。駐在所はこの島にここしかないが、他の部署から駐在員を呼んでいる。彼らが粕谷くんを病院まで連れて行ってくれるだろう。だが、安心して欲しい。彼は死んでいない。急所を外しておいている。」 その言葉に一安心した戸田であった。命を狙われたとしても、友達である以上粕谷の無事を願っているばかりだ。不浄はこぼんと咳をし、話しを戻そうと言って、今回の事件について話し始めた。事件の内容としてはこの島における風習である神子の生贄を回避するために小春は駐在員である不浄に助けを求めた。事情を理解した不浄は小春を安なに場所に保護をした。そして、小春の父親とヴァルターは新興宗教に関わりがあったため、それを探るためにヴァルターと話していたらしい。そして、ヴァルターと話ししていくうちに新興宗教の実態がわかり、それを頼りにヴァルターを戸田たちがいなくなった後に逮捕をした。不浄は戸田たちに意味ありげなことを言っていたのはできるだけこの事件に巻き込みたくなかったからである。あまり、この島とは関わりが深くない人物を巻き込みたくはないため、絶妙な言葉で返していた。けれど、事件に関する内容を仄めかした感じで言っていたのは戸田たちに事件を知るか知らないかを選ぶ選択肢を与えたかったからである。その内容を概ね理解した戸田は楠村がどうなったのか気になり、不浄に聞いてみた。 「だいたい、話しはわかりました。教授は生きていますか?」 「残念ながら、飛鳥井夫婦に殺されている。 死体はあの短時間で傷ついた思えないほど、欠損しており、とても見せられるほどではないと他の駐在員が言っていた。また、楠村さんの死体の隣には変わり果てた乾井さんの死体も見つかったらしい。本当に残念で仕方ない。」 「飛鳥井夫婦に関しては他の駐在員が逮捕しているから、もう襲われることはない、そこは安心して欲しい。」 戸田は泣くことしかできなかった。泣いた戸田を見て、不浄は慰めるような顔で語り始める。 「小春さんと戸田さんを守ることができて本当によかった。この島の神子の生贄というのは神子を生きたまま、燃やしその焼けた神子の肉を神に捧げるというのが島の伝統儀式だ。それを戸田さんたちに公にされるのを恐れて今回の事件を起こしたのだろう。」 その言葉を聞いて不浄の顔の火傷について戸田は気になり、質問してみた。 「不浄さんの顔の火傷ってまさか、」 「そのまさかだよ。昔に神子を捧げる儀があって、咲葵さんのお姉さんはその儀式で死んだ。それを助けようとして時に負ったのがこの顔の火傷だ。だからこそ、今度は絶対に助けるという気持ちで小春さんと戸田さんを守ったんだよ。」 「本当にありがとうございます。私とピーちゃんを守ってくれて。」 「いやいや、それほどでもないさ。」と戸田と不浄の微笑ましい会話が続いた後、戸田の電話から着信が鳴った。一体誰なのか見てみるとピーちゃんの名前であった。不浄は出てあげた方がいいんじゃない?と言われたので戸田はピーちゃんからの電話に出た。 「もしもし、実佳ちゃん。私だよ‼︎ピーちゃんだよ。」
@NihonUniversity College of Art