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食い坊
場面12: 登場人物:ヴアルタ・グレイプ、飛鳥井魚太郎、不浄 ヴアルタは、結婚式の喧騒から逃れるように、島の神社へと向かっていた。警察署での不浄とのやりとりを思い出しながら、彼の中に一つの疑念が強く芽生えていた。神社の存在を島の警察官が知らないというのは不自然だ。しかも、飛鳥井魚太郎が宮司であること、そしてその娘である小春の失踪に対する周囲の態度の奇妙さ。何かがこの島には隠されている。 夜の闇に包まれた神社は静かで、昼間の結婚式とはまるで異なる世界のようだった。鳥居をくぐり、参道を進むヴアルタの足音が砂利を踏みしめる音だけが響く。周囲には人影がなく、不気味なほど静かな雰囲気が漂っていた。心の奥底で何かが警告しているような、そんな感覚がヴアルタを襲った。彼の胸の中で、不浄が何かを隠しているという確信が高まる。 神社の境内に入ると、社殿の前に立つ飛鳥井魚太郎の姿が見えた。彼はほうきを手に、境内を掃き清めているようだった。その姿は、まるで何事もなかったかのように落ち着いていて、ヴアルタの中にさらなる疑念を呼び起こした。まるで何かを隠すために“日常”を装っているかのように見えた。 「こんばんは、飛鳥井さん」 ヴアルタは声をかけた。魚太郎はほうきを止め、ゆっくりと顔を上げた。 「おや、ヴアルタさん。こんな時間にどうしたんですか?」 ヴアルタは笑顔を見せながら、内心の不安を隠した。 「少し散歩をしていたら、こちらまで来てしまいました。昼間の結婚式では少しお話ししただけだったので、改めてご挨拶をと思いまして」 魚太郎は微笑みを浮かべ 「そうですか。それはご丁寧にありがとうございます」 と応じた。しかし、その微笑みの裏には何か隠しているような影が見えた。まるでその場に立つこと自体が重荷であるかのように。 「ところで、飛鳥井さん…」 ヴアルタは少し間を置いて言葉を続けた。 「この神社について、少しお聞きしたいことがあるんです。小春さんのことも含めて…」 魚太郎の表情が一瞬硬くなったが、すぐに元の穏やかな顔に戻った。その瞬間の変化はヴアルタにとって十分すぎるほどの手がかりだった。 「小春のことですか…。彼女は今どこにいるのか、私たちも心配しているんですよ」 「そうですよね。ですが、何か手がかりになることはありませんか?小春さんが最後にここに来たときのことなど、何でも結構です」 魚太郎はしばらく黙ったままヴアルタを見つめていたが、やがてため息をついて答えた。「実は…小春は最近、この神社に関心を持っていて、夜な夜なここに通ってきていました。何かを探しているような様子でね」 ヴアルタは驚きを隠せなかった。 「何かを探していた…ですか?」 魚太郎はゆっくりとうなずいた。 「はい。具体的に何を探していたのかはわかりませんが、彼女は何かに取り憑かれたように熱心でした。そして、その直後に姿を消してしまったのです」 その言葉に、ヴアルタの中で一つのパズルのピースがはまった気がした。この神社、そして小春の失踪。それらは単なる偶然ではなく、島に隠された何か深い謎に関係しているに違いない。島全体が、何かしらの秘密を共有しているかのようだった。 「飛鳥井さん、もしよければ、私も小春さんが探していたものを一緒に探してみたいのですが…」 魚太郎は一瞬ためらったが、やがて静かにうなずいた。その目には一抹の不安が浮かんでいた。 「わかりました。あなたがそこまでおっしゃるなら…。ただ、くれぐれも気をつけてください。この島には、我々が知らない何かがあるのかもしれません」 その言葉はヴアルタにとって警告のように聞こえたが、逆に彼の興味と緊張感を一層高めるものでもあった。ヴアルタは深くうなずき、その場の静寂に身を委ねた。彼の胸の中には、この島に潜む真実への探求心がますます強く燃え上がっていた。何かが待っている、そう感じさせる不気味な静けさの中、彼は一歩ずつその核心に近づいていくのだった。 ヴアルタが巻物を手に取ろうとしたその瞬間、突然祠全体が強く揺れた。地震のような激しい揺れに、ヴアルタと魚太郎は思わず身を寄せ合った。 「これは…何かが起こっている!」 魚太郎が叫んだ。 ヴアルタは巻物を手に取り、急いで祠の外に出た。外に出ると、神社の周囲の木々が異様に揺れ動き、まるで何かが目覚めたかのような不気味な気配が漂っていた。 「飛鳥井さん、この巻物を解読すれば、何か手がかりが得られるかもしれません」 魚太郎は顔を青ざめたままうなずいた。 「急ぎましょう。この場所には長くいられない」 二人は巻物と像を手に、急いで神社を後にした。何が目覚めたのか、その正体はまだわからない。しかし、ヴアルタはこの巻物こそが小春の行方と島の秘密を解き明かす鍵であると確信していた。そして、その謎を解くための戦いが今まさに始まろうとしていた。 ヴアルタと魚太郎が巻物を手に神社から逃げ出した後、彼らは島の外れにある、静かな集会所のような場所にたどり着いた。風が強まり、島全体に何か不穏な空気が漂っているように感じられる。二人は息を整え、巻物を広げた。 「これが小春さんが探していたものに関係しているとしたら…何か手がかりがあるはずだ」 ヴアルタはそう言って巻物を慎重に見つめた。 巻物には古代文字のようなものが刻まれており、意味を理解するには時間がかかりそうだった。しかし、その中央には奇妙な円環の模様が描かれており、まるで島全体を象徴するかのように見えた。 「この模様…どこかで見たことがある」 魚太郎が思い出すように呟いた。 その時、背後から静かに歩み寄る足音が聞こえてきた。二人は振り返ると、そこには不浄が立っていた。不浄は微笑みながら、二人をじっと見つめていた。 「何を見つけたのですか、教授?」 その声には冷たい響きがあり、まるで二人の行動をすべて見透かしているかのようだった。 「不浄…なぜここに?」 ヴアルタが警戒心を隠さずに尋ねた。 「私には島の平和を守る責任がありますからね。あなた方が何か危険なものを解き放ったのではないかと思い、確認しに来たのです」 不浄の言葉には皮肉がこもっていた。 魚太郎は眉をひそめた。 「我々はただ、小春の手がかりを探していただけだ。あなたには関係のないことだ」 しかし不浄はその言葉を軽く受け流し、巻物に視線を移した。 「その巻物…それは開いてはいけないものでした。島に古くから伝わる掟を破ったことになりますよ」 ヴアルタは不浄の目を見据えた。 「ならば、なぜ小春さんはこの巻物に興味を持ったのですか?彼女は何を知っていたのか、そしてあなたは何を隠しているのですか?」 不浄は一瞬黙り込んだが、やがて微笑みを浮かべたまま答えた。 「小春さんが何を探していたのか、私にも分かりません。ただ、この島には触れてはならない秘密がある。それを破ると、代償を支払わなければならないのです」 その言葉に、ヴアルタの中で疑念がさらに強まった。小春の失踪、神社の秘密、そして不浄の態度。これらすべてがどこかで繋がっているはずだ。彼は巻物を握りしめ、決意を込めて言った。 「私は小春さんを見つけ出す。そして、この島の真実を暴く」 不浄はその言葉に対して何も言わず、ただ微笑みを浮かべ続けていた。しかし、その目には一抹の冷たい光が宿っていた。まるでヴアルタたちの行動を静かに見守りながらも、何かを待っているかのように。 場面13:島の記憶 登場人物:戸田美佳、楠村喜朗、ヴアルタ・グレイプ 一方、戸田美佳は楠村教授とともに小春の家を訪れていた。家の中は静まり返り、まるで時間が止まったかのように感じられた。彼らは小春の部屋に入り、手がかりを探していた。 「ここには何も残されていないようですね…」 楠村は部屋を見回しながら言った。 「でも、この場所に何かがあったことは間違いない。小春さんがここで何を見つけたのか、それを知る必要があります」 戸田は頷き、ベッドの下に手を入れて探ってみた。その瞬間、彼女の手に冷たい感触が伝わった。彼女は慎重にそれを取り出した。それは小さなノートだった。 「これ…小春のノートです」 戸田は驚きを隠せなかった。 楠村は興味深そうにノートを受け取り、ページをめくった。そこには日付とともに、神社や祠についてのメモが書かれていた。そして、最後のページには大きく「祠の箱を開けるべきではない」と赤いインクで記されていた。 「彼女は何かを知っていたんだ…」 楠村はつぶやいた。 「このノートが、我々の次の手がかりになるかもしれない」 戸田は不安げに楠村を見つめた。 「でも、小春は何を見つけたのでしょうか?そして、なぜこのノートには警告が書かれているんですか?」 楠村は深く息を吐き出した。 「それを突き止めるために、我々も神社へ行く必要があるようだね。何かがそこに隠されている」 戸田は決意を新たにした。 「分かりました、教授。一緒に行きましょう。小春を見つけるために」 二人はノートを手に、再び島の謎に立ち向かうための準備を始めた。その背後には、静かに島の風が吹き抜けていった。何かが動き出している。それを感じながら、彼らは行動を開始した。 夜が更ける中、ヴアルタと魚太郎が集会所から巻物を手に出ると、彼らの前に戸田と楠村が立っていた。お互いに驚いた表情を見せたが、すぐにその場の緊張感が二人を包んだ。 「ヴアルタさん!」 戸田が声をかけた。 「このノートを見てください。小春が書いたものです」 ヴアルタはノートを受け取り、中を見た。その内容は彼が持っている巻物と一致する部分があった。そして、その赤い警告の文字が目に留まる。 「祠の箱を開けるべきではない」 楠村が口を開いた。 「私たちは何か非常に危険なものに触れてしまったようです。この島には、我々が想像している以上の謎と危険が隠されている」 その時、不浄が再び現れた。彼は冷たい笑みを浮かべながら、全員を見渡した。 「さて、皆さんが集まりましたね。これで全てのピースが揃ったようです」 ヴアルタは不浄に向き直り、強い口調で尋ねた。 「あなたは一体何者なんだ?この島の秘密にどう関わっている?」 不浄は静かに微笑んだまま答えた。 「私はただ、この島の守り手に過ぎません。しかし、あなた方が真実を知りたいというのであれば、その覚悟を示していただきましょう」 その瞬間、周囲の風が再び強まり、木々が激しく揺れ始めた。夜の闇がさらに濃くなり、まるで島全体が何かを拒絶しているかのようだった。 「さあ、これからが本番です」 不浄の声が風に乗って響く中、ヴアルタ、戸田、楠村、そして魚太郎は、それぞれの決意を胸に秘めながら、未知の危険に立ち向かうために進むのだった。彼らが見つけるのは、果たして真実か、それともさらなる謎か。その答えは、島の奥深くに隠されている。 場面14:島の静寂 登場人物: ヴアルタ・グレイプ、飛鳥井魚太郎、戸田美佳、楠村喜朗、不浄 島の謎の解明に向けた調査は、各々がそれぞれの真実にたどり着く中で進んでいった。夜が更け、島には重々しい静寂が漂っていたが、その背後には恐怖と不安、そして長い間隠されてきた秘密が渦巻いていた。 神社では、ヴアルタと飛鳥井魚太郎が対峙していた。二人の間には、互いに対する疑念が絡み合い、不安定な関係が生じていた。魚太郎の礼儀正しい態度の裏には娘・小春に対する深い心配があり、ヴアルタはその失踪に関わる神社の秘密に迫ろうとしていたのだ。 魚太郎は、しばらく口をつぐんでいたが、ついにため息をつきながら告白した。 「娘は、他の者とは違っていた。彼女は…神社の奥に隠されていた、何かを見つけてしまったんだ」 その言葉には苦悩と、娘に対する愛情が滲んでいた。 ヴアルタは眉をひそめ、魚太郎の顔をじっと見つめた。 「何を見つけたんだ? そして、どうして姿を消したんだ? 何があった?」 魚太郎は、しばらくためらうような様子を見せたが、意を決してヴアルタを神社の奥に連れて行くことにした。神社の奥に進むにつれ、空気は冷
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