作品と、作品に対する楊先生の一言コメントを掲載いたします。
作品1番
題:「解体師」
胸を開いて、丁寧に慎重に皮をはいでいく。この個体は十分に発達したのか、肌はほどよい弾力を持ちつつも、私の指に吸い付くほど瑞々しかった。
肉の解体は何度もこなしてきているが、若い個体であるほどその難易度は上がる。骨は丈夫であるし、肉は刃を通さない。オスはとりわけ強靭でナイフが途中で折れてしまったこともあったほどだ。
胆のうには袋をかぶせ、肺から腸までを一気にひきずりだす。白い柔肌の狭間から鮮やかな赤が見えはじめるこの瞬間、この瞬間が一番美しいのだ。
ああ、たまらない。
君にはこんな制服など似合いはしないよ。
楊先生の一言コメント:「解体師」?グロテスクも鮮やか。
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作品2番
題:「目」
車体が揺れて上半身が右曲がりになる。よろけた革靴が誰かのつま先を踏んだ。右隣のOLが舌打ち混じりの眼光をこちらに浴びせてくるので、僕は上体を持ち上げて小さく会釈をした。
鞄をもった左手に何かが触れた。両手は行儀よくおひざの上に、なんてことは最早できないこの歳、僕の手は容疑者にさえなり得る。だから、細心の注意を払って左手を足の前に動かした。
「何、痴漢?」
左ななめ後ろ、短かすぎるスカートをまとった女子高生が下卑た笑い声とともにつぶやいた。その二秒後、シャッター音が満員電車に響く。
目だ。今、僕の首もとには、多くの目が貼りついている。目。女子高生のクスクス笑いと、OLの携帯が奏でるフリック入力の乾いた音、噂話、目。その合間を塗って、僕の冷や汗が、静かに背中をつたった。
左をみる。そこにいたのは、堂上の目を向ける、四十半ばのサラリーマンだった。
楊先生の一言コメント:「目」?満員電車での一コマ。気まずそうな空気感がありありと伝わってくる。
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作品3番
【詩のタイトル】 私と猫の路上のワルツ
何を求め鳴く?
むみゃぉおー
むみゃぉおー
むみゃぉおー
帰り道ビルの隅に猫みつけ
ぱたぱた歩く。
信号渡り、
ぱたぱた歩く。
逸る気持ちを隠すため
緩やかな歩調で向かった
猫のいない辺鄙なビルの隅
烏の止まり木にすらなれないだろう
猫を求め鳴く
みゃーぉー?
みゃーぉー?
みゃーぉー?
帰り道駐車場に猫みつけ
てくてく歩く。
車を渡り、
てくてく歩く。
逸る気持ちを示すため
緩んだ頬で向かった
猫のひそむ密かな駐車場
私の止まり木には十分すぎる
楊先生の一言コメント:「私と猫の路上のワルツ」?初々しい即興詩。楽しそう。