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作品12

投稿作品を掲載いたします。

題:「肩」

改札から吐きだされた途端、目の前がひらける。立ち止まることなく右の道を選び、自分のペースで歩いていく。今日は行ったことのない道を行ってみよう、そう決めた足は軽い。イヤホンから流れる音楽に合わせて歩く速度もあがっていく。一人の気楽さと高揚感に包まれたその時、激しく視界が揺れた。ぶつかった・・・!

「すみません!」

その言葉が誰もいない私の後ろで揺れていた。

作品11

投稿作品を掲載いたします。

Thema:孤独
Title:ぼくはくま

あいつはかわいい女の子と手を繋いで行った。
あのこは老夫婦に大事にされて行った。
あやつは赤いラッピング袋に包まれて行った。
そいつは散々なでまわされふりまわされたあげく少年と行った。
そのことあのこは2人そろって姉妹に抱かさって行った。
このこは少女に服を選んでもらってそれを着て行った。
そやつは勝ち誇ったような顔で彼女と行った。
こいつももうじき行くだろう。
ぼくはいつまで、ここにいるだろう。
ぼくはいつから、誰かとどこかへ行けるだろう。

作品10

投稿作品を掲載いたします。

Thema:優柔不断
Title:バトル

扉が開いて鼓膜が一気にピコピコがやがや支配される。
はっきりとした機械音が何重にも重なればそれは、ぼんわりと耳を刺激しはじめてくる。
震える指先で薄汚れた100円玉を1枚財布から抜きとる。
その丸い表面から伝わるほんの小さな冷たさに全身から汗がふきでてくる。
全体重がコインにのったとき、そのすべてを授けるように投入口へカラリと送りこむ。
ふっと力が抜けて唾を1束のみこむ。
右方向です。
左方向です。
脳内ナビが誘導を開始。
目的地です。
ここに命をかける。
ばこんとOKボタンを押せば、ガラス越しのお目当ては両わきをはさまれて必ずや僕の足元の出口から顔を出すはずだ。
あれ、、、
おかしいぞ、、、
ちがうそんなはずはないのに、、、
財布がどんどん軽くなる。
山積みになったガラスケースの中は少しずつその山を崩していく。
お前ではだめだ抱き上げてやるには重すぎる。
お前でもだめだひっぱり落とすには体の向きが悪すぎる。
あれー、、、あれ、、、
財布がどんどん軽くなる。
山積みになったガラスケースの中は少しずつその山を崩していく。
結局、今回の出費金額は5千弱。
これからバイトだ。

作品9

投稿作品を掲載いたします。

Thema:花
Title:水

道端に穴が空いていた。
それは透明で、ジャンプすれば飛び落ちてしまいそうなほど深い。
もしくはそれはトリックアートの一種で、ジャンプすればばかをみるだけかもしれないとも思えてくる。
穴にへばりつく白い点々がこきざみにおどっている。いや、何かにおびえてふるえている?わからないけど、それと同じものが頭上からもひらひらと文字のようにふりおりてくる。
ふつりと穴に落ちてゆく。
おっこちないように下をのぞく。
同じ顔をした猫と目が合う。
鼻先がぬれて花びらがくっつく。

作品8

投稿作品を掲載いたします。

Thema:イライラ
Title:女性

身体中に感情が充満して、目から全部出た。
指の間に、先端にまだ皮ふが残った黒い髪の毛が挟まって、ベタベタした。
ひざにじゅうたんの模様がへばりついてかゆくなってきた。
唾より重く、涎より密の狭い唾液がくちびるをこじ開けてきた。
極端にうねった足の小指をにらみつけて、ピンヒールの細い棒をパキパキと折って、足の指の間に挟んで握った。
はたりと落ちてしまっても、汗のせいで落ちなくても、どっちにしろ、骨にあたって痛かった。
ピンヒールの赤が目の中で揺れを止めた頃、噛み切ってしまう前の舌から血の味がした。

作品7

投稿作品を掲載いたします。

題:「セケン」

「どうしてママはママなの?」
「それはね、ママがあなたのお母さんだからよ。」
「ふ~ん、じゃあママはずっと”まま”?」
「そうよ、ママは”まま”のままよ。」
「・・・変なの。よくわかんないや。」
「まだあなたには難しかったかもしれないわね。ほら、お外に遊びに行ってきなさい。お外にはたくさんのモノが居るわよ。そのたくさんのモノと、たくさんオカカワリしてきなさい。」
「オカカワリ?なぁに、それ。それしてどうするの?」
「ママの所へ帰ってくるのよ。」
「へえ、そんなら簡単だね!じゃあ僕行ってくるよ。」
「はい、いってらっしゃい。カラスが鳴いたら帰ってくるのよ。」

作品6

投稿作品を掲載いたします。

題:「塔」

静けさの中 積み立てていく
何段にも 積み上げていく
ユラユラと不安げに揺れる僕の塔
息を殺し 神経を研ぎ澄ます
勝手に揺れる指先に歯を食い縛る
最後の一つ 頂へ登る 完成への一手
 
 鼻から全身の空気を抜き 見据えた

 それは 巨きく 誇らしげに そびえていた
達成感に顔が緩んでいくとともに ムクムクと欲望が湧いてくる
 ”これですべてが完成だ”

壊した 崩した 積み上げてきたもの全て 一息に
虚しさを隠した高揚感が僕を包む
 ”ああ、満足だ”

作品5

投稿作品を掲載いたします。

題:「熱」

何も聞きたくない。
体の周りに膜が張っている。
暑い。
目を閉じて、項垂れていたいのに。
腕をヤミクモに振り回して、あちこちにぶつけて、
足で目いっぱい床を蹴りつけて、
体ごと無重力に放り出したい。
自分を縛る何かを解くのが難しくてもどかしくて、
誰も 何も こないで。
今は自分が自分でいっぱいだから。
貴方を受け入れるスキマが、今はない。
それを伝えるヨユウもない。
膨張する自分、

  はやく、弾けてしまえ。

作品講評_4

作品と、作品に対する楊先生の一言コメントを掲載いたします。

トドノツマリペンギン

トドノツマリペンギン

トドノツマリペンギンは
すごく蒸し暑い地方の
雲の表面にたくさん住んで
そのまま アグラかいて暮らしている

トドノツマリペンギンは
すごく思慮深い
トドノツマリペンギンはドドメ色

(腹の色は緑)

トドノツマリペンギンは
人の思慮深さを主食にする
人々から生まれた
とりとめのない
苦くて酸っぱくて
渋くて溝の深い
とても食えた物じゃない議論、
にそっと座って考える
真ん中に図々しく陣取り
眉間に皺を寄せて
実が熟す様に考える

ペンギンは自分のヒレで
仲間の腹を叩いた
そして、 見上げる
雲の上の淡い夜空

ペンギンは思いを馳せる
地上の腐った公園に
1才の、うるさな静けさ
ただ曖昧な喉奥のたわいない吃り
(それはいやに
蒸し暑い夏のキスゲであった)

ペンギンは空を飛ぶわけではない
ただ、道端の石を眺め

空から、ふと飛び立ち給ふ
くろだいだいの空を潜り続ける
(がゃ がゃ がゃ がゃ がゃ がゃ・)
光の中から雲の気泡が取り巻き
勢いをつけてやってくる
無象の光はせんになって
ごろごろ
明後日の方向にペンギンがやってくる
ひしゃげた空がそれらを流し
なみだ がぼくの眼におちる

ぺんぎんはどっ と崩れ
仰山 、流れ
点は質量を溜め続ける
地べたに這い蹲る
ペンギンの色は土留色
ペンギンの腹は翡翠色
あの日あの時 ひしゃげたコガネムシ
自らに斧を当てたあの時みたいに
すっと
ならないまま
ずっと
重ね合って
そう そのまま ぼくの
こころはきっとそのいろ

楊先生の一言コメント:心地よいリズム感、言葉の「量」に圧倒される。括弧の部分の説明は省いても良いかな、、、