第二位 真昼なのに昏い部屋

●あらすじ

江國香織が中央公論文芸賞を受賞した、不倫を描いた恋愛小説。  

“軍艦”なような広い家に、会社社長の夫と暮らす美弥子さんは、「きちんとしていると思えることが好き」な主婦。 アメリカ人のジョーンズさんは、美弥子さんの純粋さに惹かれ、近所のフィールドワークに誘う。  

気づくとお互いは二人のことばかりを考えるようになっていた──  

●批評

三人称のですます調で描かれる不倫物語は、まるでほのぼのとした童話のよう。  

しかし実態は、恋愛とは?結婚とは?不倫とは?という本質を、かつてない文体で描き出している怖ろしい作品。

「せめて、きちんとした不倫妻になろう」  

「私は転落したのかしら。でも、どこから?」  

純粋で美しく、ぞっとする言葉たちが飛び込んでくる。  

衝撃なのはラスト。  

ジョーンズさんの心情描写が、ひとの恋愛感情の核心を突いている。